空き家

国の対策で歯止めは効くのか?『所有者不明の空き家・空き地』

日本全国で増え続けている“空き家”。その中でも問題視されているのは“所有者不明の空き家”です。

所有者不明の空き家とは、登記上の所有者が不明(すでに故人の場合も…)、または、所有者が判明していても、連絡が取れない状態等の空き家を指します。空き家だけではなく、空き地(土地)でも同じく増え続けています。

相続登記が未了のまま代替わりし、所有者が分からなくなるケースが多いといいます。そういったこともあり、2024年から「相続登記の義務化」が開始されました。

今回は、所有者不明の土地・空き家の問題点や解決策を考えてみたいと思います。「相続登記の義務化」が始まり約1年半。どのような変化があるのでしょうか。現在、空き家や土地を所有している方はもちろん、今後相続する予定の方はぜひ参考にして下さい。

所有者不明になる空き家・空き地

所有者不明といっても、不明になってしまう背景は様々ですが、まず考えられるのは所有者が亡くなり相続登記が行われず放置されているケースです。

例えば、身寄りのない方が亡くなり相続人がいない場合、所有していた自宅や土地はそのまま放置され所有者不明の空き家、空き地となってしまいます。他には、所有者は分かるものの居所が不明で連絡が取れない、もしくは生存しているかどうかも分からないというケースも同様です。

あるいは、相続人がいる場合でも全員が“相続放棄”をした場合、相続人不在となり同じ状況になります。相続してもメリットがなく、負担になってしまうような土地・建物で多く見られるようです。

上記のような、所有者不明や相続人のいないケースなどの特定の事情により、財産の持ち主が自ら管理できない状況で利用される制度に「財産管理人制度」があります。

財産管理人制度とは、本人に代わって財産を管理する「財産管理人」を家庭裁判所が選任することで、その財産の管理・処分を行う制度です。

所有者不明の空き家・空き地の問題点

所有者不明の空き家が増加すると、建物の老朽化が進み、倒壊の危険性が高まるだけでなく、犯罪の温床になるリスクもあります。

建物がない空き地だとしても、雑草が生い茂ると不法投棄場所の対象になってしまい、たばこのポイ捨てや放火等で、火災の危険性も高まります。また、ダニや蚊、ゴキブリなどの害虫が集まり衛生的にも問題があるでしょう。

老朽化した空き家や空き地が増えることで、近隣住民の迷惑になるばかりか、地域全体の治安も悪化させてしまう恐れがあるのです。

参考記事:空き家の耐震性を考える ~補助金・助成金の活用~

国が行う対策とは?

近年は増え続ける空き家・空き地問題を解決すべく、国も対策に力を入れていて様々な罰則のある制度が設けられるようになりました。

●2015年『空家等対策の推進に関する特別措置法』

そのまま放置すれば倒壊などの危険性が高く、近隣に悪影響を及ぼす空き家を「特定空き家」に認定し、所有者に対して市区町村による指導や勧告、解体などの強制執行を行うことができることを定めた「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。

さらに、2023年12月には「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。

「特定空き家」に指定されてしまう空き家はどのような建物なのか、どういった流れでどのような罰則が発生するのかは下記の参考記事をご覧ください。

参考記事:管理されない空き家の未来 ~「特定空き家」・「管理不全空き家」とは~

相続した土地や建物の相続登記をしないまま放置している方は、「特定空き家」とみなされてしまった場合、突然所在地の市区町村から連絡が来る可能性もあるのです。

2023年4月『相続土地国庫帰属制度』

「相続土地国庫帰属制度」は、相続や遺贈で取得した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。

これまで相続放棄をするには、被相続人の全ての財産の権利を手放す必要がありましたが、不要な土地の権利だけを放棄できる新たな仕組みが設けられました。

ただし、相続や遺贈で取得した“土地のみ”が制度の対象で、自身で購入した土地や、建物のある土地、担保権などが設定されている土地等は引き取ってもらえません。他にも対象外となる条件がありますので、制度を利用したいときは確認が必要です。

『相続土地国庫帰属制度について』/法務省

●2024年4月『相続登記の申請義務化』

これまでは不動産等を相続し、登記を行わなくても罰則はありませんでした。特に資産価値の低い地方の土地や建物等では、罰則がないのであれば、わざわざ登記費用を払ってまで相続登記したくないと考える方は少なくないでしょう。

上記のように、相続登記が行われないことが所有者不明の空き家・空き地が増える原因の一つであったことから義務化されました。

『不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~』/法務省

相続の開始を知ったときから3年以内に登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性がありますので注意が必要です。

そして、相続登記の義務化以前(2024年4月1日より前)に発生した相続であっても、相続登記を行っていない場合は申請しなければなりません。この場合、2027年3月31日までに相続登記の申請が必要となります。

相続登記の手続きはご自身で行うことも可能ですが、スムーズに済ませるために司法書士に依頼することも視野に入れましょう。

参考記事:相続問題を解決に導く専門家 ~専門家の役割とあなたに合った選び方~

●2026年4月『住所等変更登記の義務化』

住所等変更登記の義務化は、相続だけではなく、引っ越しや結婚等で住所や氏名が変わる時も変更登記が義務化されます。

登記簿上の所有者については、その住所等を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければならないこととされました。正当な理由がなく違反した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。

『住所等変更登記の義務化特設ページ』/法務省

まとめ

現在、国では法律の整備を行い、所有者不明の空き家の増加を食い止める対策に乗り出しています。所有者不明空き家・空き地に対して、各自治体だけでは対応が困難といった現実もあり、特に行政代執行による解体費用等の負担が大きな課題となっているといいます。

こういった問題を解決していくためには、所有者や相続人は所有している土地・建物の状況を把握し、適切な対処が必要だと考えます。

空き家・空き地は、様々な有効活用法があります。自分たちで活用することが難しい場合には、売却することで必要な方に活用してもらうという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。

活用方法や売却等での困りごとがありましたら、私たちのような不動産相続の専門家に相談することも視野に入れましょう。

須崎 健史
執筆・監修 須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役) 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。