空き家

管理されない空き家の未来  ~「特定空き家」・「管理不全空き家」とは~

日本では空き家が増え続けており、総務省の令和5年版「住宅・土地統計調査」によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合・空き家の数ともに過去最多となったそうです。

出典/総務省の令和5年版「住宅・土地統計調査」

総住宅数(6502万戸)に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年(13.6%)から0.2%上昇しています。空き家数の推移をみると、これまで一貫して増加が続いていて、1993年から2023年までの30年間で約2倍となっていることが分かります。

そして、賃貸、売却、別荘などの二次利用を除いた、利用目的のない空き家は385万戸と2018年と比べ36万戸増加。総住宅数に締める割合も5.9%と、いずれも過去最も大きい数字となりました。

空き家を放置すると、倒壊、景観悪化、不法侵入、害虫の発生など様々な悪影響が生じるおそれがあり、大きなトラブルにつながりかねません。

そこで国は2015年、そのまま放置すれば倒壊などの危険性が高く、近隣に悪影響を及ぼす空き家を「特定空き家」に認定し、市区町村による指導や勧告、解体などの強制執行を行うことができることを定めた「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家法」)を制定しました。しかし、「特定空き家」に指定されてからの対応では限界があることから、2023年に改正され、適切に管理がされていない「特定空き家予備軍」の空き家も、「管理不全空き家」として、所有者に指導などを行うことができるようになりました。

「特定空き家」の定義とは

空き家とは、「1年以上誰も住んでいない状態」「1年以上何も使われていない状態」、そのような住宅全般が空き家といわれています。具体的には、1年間を通して人の出入りの有無や、水道・電気・ガスの使用状況、所有者の住所が異なる場所にあることなどから総合的に見て、空き家かどうか判断するとされています。

その空き家の中でも、管理やメンテナンスもされずに放置され、ボロ屋敷のような状態になってしまった建物もあります。そういった空き家を市町村が「特定空き家」として認定し、指導などを行うことができるのです。

空き家法では、次の4つの状態と認められる空き家を「特定空き家」と定義しています。

「管理不全空き家」とは

「管理不全空き家」とは、「特定空き家」に指定される前段階となります。「特定空き家」のように完全に放置されているという訳ではないのですが、壁や窓の一部が腐食・破損、落下の可能性があったり、雑草や枯れ草が管理されていない(病害虫などが発生する可能性)、敷地内にゴミなどが散乱、放置されているような危険性のある空き家を指します。

「特定空き家」の定義と同じような内容ですが、前段階ということですので言うまでもありませんね。

今までは「特定空き家」と認定されなければ市町村から管理命令を出せませんでしたが、「管理不全空き家」という区分が新たに設置されたことにより、市町村が早い段階で指導・勧告ができるため、「特定空き家」の増加を抑制することが期待されています。

「特定空き家」に認定されてしまったら

特定空き家に認定された空き家については、下記の順序に従って措置が行われます。

一般の住宅には、固定資産税などが減額される「住宅用地特例」が適用されますが、「特定空き家」に指定され、さらに助言・指導に従わず勧告を受けると、住宅用地特例の軽減措置が受けられなくなるため、固定資産税の負担が増加する可能性があります。

そして、勧告によっても改善が行われない場合は、勧告された対応を実施するよう命令が出され、命令にも従わなかった所有者には、50万円以下の過料が科せられることになり、市町村は行政代執行を行うことができるようになります。市町村が所有者に代わって解体などの是正措置を行い、その行政代執行にかかった費用を所有者へ請求します。

尚、納付期限に支払いができない場合は、財産の差押えと発展することも少なくありません。

そして空き家法では、所有者・管理者不明の空き家に対して、市町村が「略式代執行」行うことも認めています。

これは、緊急性があるにもかかわらず所有者を特定できないために、周辺地域に悪影響を及ぼすことのないように行われるもので、行政代執行と同じように措置することができます。所有者が特定できないため、かかった費用は市町村の財源で賄われることになります。

まとめ

相続などで実家を所有することになったときは、「特定空き家」や「管理不全空き家」と指定され困らないために、実家の将来について家族と話し会い、方向性を決めておくことが重要です。

空き家になってしまった場合は、所有者として適切に管理することはとても重要ですが、ご自身での対処・判断が難しい時は、不動産や相続の専門家に相談することをおススメします。空き家には、売却や解体も含め様々な活用法があります。今はただの空き家かもしれませんが、活用の仕方によっては、今後、地域や人の役に立つ「何か」に生まれ変わる可能性もあるのです。

須崎 健史
執筆・監修 須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役) 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。