空き家の耐震性を考える ~補助金・助成金の活用~
自然災害が起きた時――、『空き家』にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
空き家は、人が住んでいないことで維持管理のされていないお宅が見受けられます。建物の老朽化が進み、耐久性が著しく落ちているケースが多いため、自然災害の中でも特に、地震による被害のリスクが大きいと言えます。
また、空き家の周囲にあるブロック塀や庭木の管理も行き届いていないため、これらが倒れることでさらに被害が拡大する可能性も考えられます。
地震により倒壊した空き家やその周囲の構造物が、近隣の建物や住民に重大な被害をもたらすことも考えられます。そして、倒壊した建物の片付けや撤去には高額な費用がかかり、所有者にとって大きな経済的負担となるでしょう。
今回は、空き家の地震対策について解説します。対策には、補助金や助成金を活用することもできますので、相続で空き家を所有している方やその予定のある方は参考にして下さい。
地震大国日本
日本は災害大国と呼ばれ、近年多くの自然災害が発生しています。その自然災害には豪雨や台風などがあり、中でも多いと言われているのが“地震”です。日本では昔から地震が多く発生し、「地震大国」とも言われています。
記憶にも新しいですが、2024年元旦に起きた「能登半島地震」。地震による二次被害で、津波や火災もあり、甚大な被害をもたらしました。復旧も少しずつ進む一方で、今も倒壊した建物の多くが残されたままです。
皆さんも感じていると思いますが、近年は地震の発生回数が増加しています。2024年1月から6月の半年間に発生した「震度4以上」の地震だけでも95回(68回は石川県)、「震度3以上」とすると344回(248回は石川県)も発生。能登半島地震による影響も大きいですが、日本各地で地震が発生しています。
また、内閣府の災害情報ページでは、発生の切迫性が指摘されている「首都直下地震」や「南海トラフ地震」が、30年以内に発生する確率は70%程度と高い数字で予想されています。
空き家の地震対策の現状
空き家が社会問題になっていることは皆さんもご存じでしょう。そして、その多くが1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建築された建物です。旧耐震基準の建物は耐震性が不十分なため、人が住んでいる、住んでいないに関係なく耐震改修工事を行うか、もしくは解体する必要があります。
しかし現状では、何も手を付けることなくそのまま放置されている建物が多くあります。所有者にとっては「解体費用をかけたくない」、「労力や手間をかけたくない」、「何をすればいいのか分からない」等、消極的な理由があるかと思います。
しかし、放置していた結果、能登半島地震の被災地では、空き家が倒壊したことで復興作業の妨げになっている現実があると言います。石川県は全国的にも空き家が多い地域であることに加え、二次避難で空き家の所有者が遠方で生活するケースも増え、連絡も取るのも一苦労で手付かずの状態だそうです。倒壊した空き家は、道路を塞ぎ復旧作業の妨げになるだけでなく、治安悪化の原因となることも懸念されています。
旧耐震基準で作られた建物は、建て替えの義務があるわけではありませんが、大地震の際に家屋が倒壊してしまう可能性が高いことから、まずは耐震診断を受け、必要であれば耐震補強工事を行うことが理想です。
地震対策が難しい空き家…「売却するという選択肢」
築年数が経っている空き家の場合、耐震補強工事を施して地震対策を行うことが理想だとしても、現実的には、今後住む予定のない空き家に対して、費用をかける余裕はないと考える所有者も多いでしょう。
そのような場合は、空き家を売却するのも一つの選択肢として検討してみましょう。
空き家の売却は、所有者の住まいが遠方にあるなどの理由で、建物の管理が難しい場合にも有効な手段です。空き家は、定期的なメンテナンスを行わないとどんどん劣化してしまいます。適切な管理がされずに放置された建物は、不法侵入や放火、景観の悪化、害虫・害獣の発生、犯罪拠点といったトラブルに遭うリスクも高まります。
また、空き家を適切に管理していないと、空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)に基づき、自治体から「特定空き家」や「管理不全空き家」に認定されるリスクもあります。
参考記事:管理されない空き家の未来 ~「特定空き家」・「管理不全空き家」とは~
このような事態を避けたい場合も、空き家の売却は一つの選択肢として有効です。
耐震診断「補助金制度」について
国土交通省では、「令和12年までに耐震性が不十分な住宅、令和7年までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物をおおむね解消する」ことを目標として掲げ、所有者による耐震化を支援しています。
【住宅・建築物の耐震化について】/国土交通省
耐震診断や耐震改修には費用がかかりますが、地域ごとに様々な支援制度を講じています。弊社の活動地区である東京都立川市・国立市・国分寺市の耐震診断や補助金制度をご紹介します。
■立川市
■国分寺市
■国立市
地域によって支援の内容や条件が異なります。まずは、建物のある地域のホームページなどを確認してみましょう。
まとめ
空き家を所有している方、今後相続の予定がある方は、万一の事態に備えるためきちんとした管理や耐震補強工事を行って、適切な地震対策をする必要があります。とはいえ、誰も住む予定のない空き家に対して、費用や労力をかけて地震対策を行うというのは現実的に難しいことでしょう。
しかし、災害が起きてしまった時に倒壊した建物の片付けや、解体などで費用がかかってしまったり、その時点で売却を考えてもなかなか難しくなると予想できます。
私たちが自然災害に備えられることは限られています。空き家の放置は所有者だけではなく、近隣の住民にとってもデメリットしかありません。災害が起きた時に、所有者として何もしなかったことを後悔するのではなく、今できることに取り組むことがご自身や家族の未来、地域にとっても必要なことなのではないでしょうか。
- 執筆・監修
須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役)
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。