不動産相続

住まいの相続 ~当事者として準備しておくこと~

弊社では、『住まいと暮らしの勉強会』を定期的に行っています。その中で、「自宅を相続する予定なんですが…」と、相続する側はもちろん、相続させる側、それぞれ当事者の方々から様々な内容の相談があります。

弊社の勉強会に参加される方々は、財産について将来の方向性を決めておこうとお考えの方々なので安心なのですが、実際は、「まだまだ元気だから…」と放置していたり、相続する側のお子さん達も無関心な(財産があることすら知らない)ことが多いのではないでしょうか。

今回は不動産相続について、実際に受けた相談内容をご紹介、解説していきたいと思います。自宅を含め不動産を所有しているという方はもちろん、相続する予定の方もぜひ参考にして下さい。

法定相続人(兄弟)同士で自宅をどう分けるの?

親が亡くなり、兄弟で親の遺産を相続することになったものの、どうすればいいのか具体的な方法が分からない方も多いでしょう。とくに不動産の相続においては、相続人が複数いる場合“分割”を必要とする相続となります。そして、建物は分割することができないため相続人の間でトラブルになるケースが多いといいます。

被相続人(親)が法的な効力を持つ遺言書を作成しており、具体的な遺産の分割方法が記されている場合は、遺言書の内容に沿って遺産を分割することになります。しかし、遺言書がない場合は、遺産分割協議(※)を行い分割方法を決めていくことになります。

※遺産分割協議・・・相続人全員で財産の分割方法を話し合い協議すること。協議成立には相続人全員が納得して合意する必要がある。

また、遺言書に記載がない財産が発覚した時や、遺言内容に不服がある時は、相続人全員の同意があれば遺言書があったとしても、遺産分割協議を行う場合もあります。

遺産分割協議を行うのは、相続税が発生する場合を考慮し、被相続人が亡くなってから10カ月以内に協議を終わらせるようにすることも大切です。

前述した通り不動産の分割は難しいため、下記の分割方法を採用することが多くあります。

上記以外に、「相続放棄」という手段もあります。相続放棄を行うケースとして、相続する財産額よりも負債額のほうが大きい場合などがあげられます。

……と、一般的な流れを簡単にまとめてみましたが、実際はその家族ごとに進め方は様々でしょう。ご相談を受けている中でも、「子どもたちの中で欲しい人がいれば~」という声もあり、「なにも準備していないし、子ども達と話し合ったこともない」という所有者さんもいらっしゃいました。

以前に、「負動産」を相続する可能性のあった方からのご相談で、土地の売却をお手伝いさせていただいたことがあります。

参考記事:「負」動産の相続 ~親と子のコミュニケーションが重要~

「負動産」とは、需要が少ないために売却が難しく、固定資産税や管理費用などの金銭的負担がかかる不動産のことを指します。上記参考記事の所有者さんも、売却したくてもできない状態に陥り、最終的には“見て見ぬふり”をしていましたが、「親が元気なうちに対処したい」と、お子さん主導で売却することに成功した事例です。

このように相続不動産が「負動産」であった場合、相続する側(子ども等)の負担は相当なものになる可能性があります。相続放棄すればいい、と簡単にお考えかもしれませんが、一度「相続放棄」の申請をして受理されると、原則として取り消しや撤回が効きません。相続放棄をすれば、マイナスな財産だけではなく、プラスになる財産があったとしても受け取ることができなくなってしまいます。

相続させる側も、不動産等の財産を所有しているならば、自分が元気なうちに一緒に考える責任はあるのではないでしょうか。

脱ハンコ時代だけど相続に『実印』って必要なの?

令和3年度税制改正で押印廃止の内容が大幅に盛り込まれ、確定申告や年末調整などの身近な手続きにおいて印鑑が不要となりました。

『税務署窓口における押印の取扱いについて』/国税庁

事務の効率化やコスト削減の観点から、これまでも様々な行政手続きや税務手続きで“脱ハンコ”が叫ばれてきましたが、なかなか進展していませんでした。税制改正で“脱ハンコ”が急激に加速するきっかけとなったのが、令和2年に起きた「新型コロナウイルスの流行」です。

リモートワークの拡大や対面でやり取りができない状況、不要な外出を減らすためなど、生活様式が大きく変わったことで脱ハンコの動きが一気に進み、令和3年度税制改正では認印で行う手続きについては見直しがなされました。

しかし、あくまでも“認印”で行う手続きについての見直しため、相続手続きに関しては今まで通り「実印」が必要です。他にも不動産取引や金融契約、自動車の購入(売却)など、重要な手続きで実印が必要になることは変わっていません。

先日のご相談で、実印を使う機会が滅多にないことから「どこにしまったのか覚えていない。本当に登録しているのか自信が無い…」、「子ども達は成人しているけど、実印登録なんてしているのだろうか?」等、このような話がありました。

今はまだ、相続手続きでは「脱ハンコ」の影響はあまり実感できないことでしょう。しかし、今後は様々な手続きのデジタル化が進むことは間違いないでしょうから、今後も制度の改正には注目しておいた方が良さそうです。

まとめ

不動産を相続するときには、遺産分割協議、相続登記、相続税の申告納付等、やらなければいけない手続きがたくさんあります。

令和6年4月1日には、「相続登記の義務化」も始まりました。申請期限(相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年)以内に登記を行わないと、10万円以下の過料が科せられることになります。

相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地!~/東京法務局

これらの手続きはただでさえ面倒で時間がかかりますが、さらに不動産の相続には、分割することが難しい等といった不動産特有の問題もあります。分割方法で相続人同士が揉めるようなことになれば、さらに時間がかかってしまうことでしょう。

相続させる側もする側も、お互いが元気なうちに財産を把握し、先々の方向性を決めておくことはとても重要です。特に不動産が複数ある場合や、相続人が多い場合はトラブルを避けるため必須といえるでしょう。そして、分からないことは専門家の力を借りることも視野に入れましょう。

参考記事:相続問題を解決に導く専門家 ~専門家の役割とあなたに合った選び方~

不動産は特に、事前に方向性を決めておくことが、社会問題となっている「空き家」を増やさない行動の1つにもなります。

参考記事:負担となる実家の相続対策 ~空き家の売却~

弊社で行っている『住まいと暮らしの勉強会』では、相続問題だけではなく“住まいと暮らし”に焦点を当てて様々なご相談を受け付けております。詳しくはホームページをご覧ください。

須崎 健史
執筆・監修 須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役) 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。