『持ち家』でも増える高齢での生活困窮者
令和7年版高齢社会白書(内閣府)によると、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合(高齢化率)は2024年に29.3%となり、今後も増えると予測されています。
『令和7年版高齢社会白書』/内閣府
高齢化が進むと同時に、ここ数年注目されるようになったのが“高齢者の貧困”です。高齢者に限らず、誰でも病気や家庭の問題等のきっかけで貧困に陥る可能性があり、決して他人事ではありません。
そして、貧困状態になり得るきっかけの一つが“持ち家”ということもあります。賃貸住宅であれば住居費用の負担が毎月ありますが、持ち家なのに「なぜ?」と思うかもしれません。
今回は、高齢者の貧困の現状や原因、そして“持ち家”が貧困のきっかけとなる理由等を解説していきます。現在、持ち家でかかる費用が負担になっている方や、今後親から自宅を相続する予定の方など、老後に向けて想定しておくべき心構えなど参考にして下さい。
高齢者世帯の貧困率
厚生労働省による『2024年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の高齢者世帯全体の貧困率は約20%となっています。しかし、これは高齢世帯全体の貧困率であり、単身高齢者の場合さらに貧困率は上がり、男女でも違いがあります。
男性単身高齢者の貧困率は30%で、女性単身高齢者の貧困率は44%。単身高齢女性では約半数近くが貧困に陥っていることが分かります。
女性は貧困に陥りやすい傾向があると考えられており、特に、未婚者や離婚、死別後のシングル女性は貧困リスクが高くなるといわれています。
『2024年国民生活基礎調査』/厚生労働省
生活が苦しくなった高齢者の中には、“生活保護”に頼る方もいらっしゃるでしょう。実際、生活保護受給者の中で高齢者が占める割合も増加しています。現在では受給者の過半数を高齢者が占めているといいます。
『生活保護の被保護者調査(令和6年1月分概数)の結果』/厚生労働省
高齢者の生活費の現実
高齢になると、食費や住居費等だけではなく、若いうちでは想像がつかないほど“医療費”の支出が増えるといいます。将来のために貯蓄をされている方もいますが、医療費を含めて予算を立てている人は少ないでしょう。
そして、令和4年10月に「後期高齢者の窓口負担割合の変更」や、令和6年4月に「後期高齢者医療制度の保険料について制度改正」があったように、今の日本は財政不足のため、今後は年金暮らしの高齢者であっても、医療費の負担が増えることも予想されます。
『後期高齢者の窓口負担割合の変更等』/厚生労働省
『令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について』/厚生労働省
そして、いつまで続くか分からない“物価高騰”も高齢者の生活には大きな影響があることでしょう。
『持ち家』が貧困の原因になる!?
「持ち家があれば、高齢になっても安心」と考える方は多いでしょう。現役時代に家を購入するときには、そういったことも理由の一つになっているかもしれません。

しかし、家を維持していくにはお金がかかります。特に若いうちに建てた場合、高齢者となった時点では、家の様々な部分の修繕が必要になっていることでしょう。さらに、住みやすくバリアフリーにするためにも費用はかかります。
持ち家といっても戸建てではなく、マンション等の集合住宅を所有している方も同じです。築年数が経過すれば管理費・修繕費は上昇していきますし、室内の修繕やリフォームをするにも費用がかかります。
最近では、資金不足などの理由から十分な修繕を行うことが出来ないマンションが増え、「老朽化マンション問題」としてメディア等に取り上げられている機会も目にするようになりました。
参考記事:老後はマンションで過ごす ~中古マンションを選ぶ時の注意点~
建物を修繕・リフォームするにしても、資材や人件費も高騰しています。さらに、物価高騰での生活費、増える医療費…、持ち家があるからといって、高齢になったときに安心できる生活を送ることはできるのでしょうか。
これからは、「リースバック」や「リバースモーゲージ」といった制度を利用する高齢者が増える可能性があります。持ち家があるから利用できる様々な制度や、公的な補助金・支援金等がありますが、それぞれメリット・デメリットを理解した上で進めるようにしましょう。不安があるときは、専門家に相談することも大切です。
参考記事:住宅における『リースバック』のメリット・デメリット
持ち家があっても「生活保護」は受給できるのか
前述しましたが、高齢者の生活保護は受給者全体の半数近くを占めており、近年、高齢者以外の受給者数が減少傾向にある一方で、高齢者は増加傾向にあります。
では、“持ち家”という資産があったとしても貧困に陥る可能性がある高齢者は、生活保護を受ける事はできるのでしょうか。
厚生労働省からは、「持ち家がある人でも申請できる」とされています。もちろん持ち家は資産とみなされ、売却等活用する事が生活保護の要件となりますが、居住中の持ち家については、保有が認められる場合があります。
『生活保護を申請したい方へ』/厚生労働省
高齢者世代は、「生活保護を受けるのは恥」など、生活保護に対してマイナスイメージを持つ人も少なくないでしょう。しかし、経済的に困窮している場合は、生活保護の支援を頼ることも必要です。
生活保護への偏見をなくし、高齢者だけではなく必要な人が、必要な時に助けを求められる環境や仕組みを作ることも貧困や孤立対策の一助となるのではないでしょうか。
まとめ
以前は高齢者というと、“悠々自適に老後を謳歌しているイメージ”がありました。

老後は働かずに好きなことをしながらゆっくり過ごしたいと考え、そのために家を建てた方や自宅を相続した方もいらっしゃると思います。
しかし、現代ではそれもままならない状態です。自分の年金や貯蓄等で、医療費や介護費、生活費をまかなっていらっしゃる方もいますが、これから年金が減り、保険料や税金が上がっていく中で、定年後も働き続けなければ生きていけない高齢者は今以上に増えるのではないでしょうか。
高齢者が働ける職場は、経験や体力にもよりますが様々な選択肢があります。そういった高齢者が生涯を通じて収入を得られるように、リスキリングや職業訓練を提供することも大切かもしれません。
そして、“持ち家”が貧困のきっかけにならないよう、元気なうちに建物の将来を考える事が必要です。住まいのことでお困りごとがあれば、お気軽に弊社へご相談下さい。
- 執筆・監修
須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役)
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。