【リフォーム資金】高齢者の住みやすい住宅を整える

定年退職を迎える60代半ばになると、老後生活のことを考え、自宅のバリアフリーといったリフォーム工事を検討する方も少なくはありません。バリアフリー化はもちろん、子どもが独立して広すぎる自宅を、使い勝手のよくなるようにリフォームしたいという希望もあると思います。
その際、資金がどのくらいかかるのか…、気になるところだと思います。こういった時のために貯蓄してきた方であればいいのですが、そういった方だけではないでしょう。
「資金がないからリフォームできない」ではなく、老後を安全に楽しく過ごすために、高齢者でも利用できるリフォームローンを検討してみてはいかがでしょうか。
今回は、高齢者でも利用できるリフォームローンや、年金受給者でも利用しやすい「高齢者向け返済特例」について解説します。
高齢者向けのリフォームローン
リフォームローンとは、自宅の増改築を目的とした工事を行うときに利用できる商品です。増改築だけでなく、修繕目的でも利用可能です。一般的に住宅を購入する際に利用する「住宅ローン」とは、借入できる金額の上限や年数などが異なります。
リフォームローンの審査は、住宅ローンの審査よりもややゆるい傾向があります。住宅ローンよりも借り入れ可能金額が少ないため、年齢・年収などがチェックされますが、さほどハードルは高くありません。よって、高齢者でもリフォームローンが組める可能性は高いといえます。
しかし高齢者ということで、民間の金融機関が定めている審査条件をクリアできないケースも少なくありません。それはどのようなケースが考えられるでしょうか。

●年齢制限
民間の金融機関のほとんどは、リフォームローンの審査条件に“年齢制限”を設けています。具体的な年齢は金融機関によって異なりますが、一般的には下記のような内容が多いとされています。

金融機関によっては、70歳でもリフォームローンが利用できるケースもあります。しかし、完済時年齢の上限が設けられているため、借入時の年齢が高ければ返済期間が短くなり、毎月の返済額が多くなることに注意が必要です。
リフォームの規模が比較的小さく、借入希望額も少なければ、高齢だとしても利用できる可能性も高まりますが、借入希望額が大きい場合は審査に通らないケースも考えられます。
●団体信用生命保険
リフォームローンによっては、団体信用生命保険への加入が利用の条件になっているものもあります。
団体信用生命保険とは、ローンの返済中に契約者が亡くなる、もしくは高度障害状態になった場合に、保険会社がローン残高に相当する保険金を金融機関に支払う保険のことです。
団体信用生命保険への加入には年齢制限が設けられており、一般的には70歳までとされていることが多くみられます。ただし、リフォームローン商品によって異なることもありますので、確認するようにして下さい。
また、加入時の健康状態や病歴についての告知が必要となります。告知内容に基づいた健康状態に関する審査が行われ、その審査に通過しなければ年齢制限をクリアできていても、団体信用生命保険に加入できないということになります。
団体信用生命保険への加入を不要としているリフォームローンもありますが、加入が条件となっているリフォームローンに比べると、金利が高めに設定されていることが多いので注意が必要です。
●年金受給者の利用
また、高齢であるからこそ気をつけたいのが、年金受給者でも利用できるのかという点です。
年金受給者は会社員と比べて収入が減るため、現在の貯蓄や資産の有無などが審査に影響してきます。そして、ローンを完済できる健康状態にあること、現在返済中のローンがないか、過去に滞納した経歴の有無などをチェックされることが一般的です。
金融機関によって返済能力をどのように判断するのか、申込み条件などをしっかりと確認するようにしましょう。
リフォームローン『担保の有無』
リフォームローンを検討した時、気になることの一つが「無担保型」か「担保型(有担保型)」だと思います。
担保不要の「無担保型」は、金利がやや高く設定されているものが多く、借りられる金額は少額で、返済期間も短く設定されています。
一方「担保型(有担保型)」は、リフォームする建物など不動産を担保にすることで、一般的な住宅ローンのように低金利で長期間・高額を借入できるというメリットがあります。担保には、主に「人的担保」「物的担保」の2タイプがあり、物的担保は、リフォームする建物などの不動産を担保にすることが多いですが、人的担保は、いわゆる「保証人」を立てることをいいます。
少額のリフォームローンでは、「無担保」で審査も通りやすいという傾向がありますが、「担保型(有担保型)」のローンの場合、手続きが複雑で必要な書類も多い上、抵当権の設定費用などの経費が掛かることになります。
「小規模なリフォームだから、借りる金額は少なくてよい」という場合には、手続きがスムーズな「無担保型」のローンをおススメします。
金融機関のリフォームローンが利用できない場合
70歳以上であれば、主な収入源が年金のみの方も多いでしょう。年齢制限や他の理由から、金融機関のリフォームローンを利用できない場合も現実にあると思います。そういった場合は、下記の方法も検討してみましょう。
●住宅改修費支給制度
住宅改修費支給制度とは、40歳以上の人が加入している「介護保険」に基づく制度です。利用するには“要介護(要支援)認定者”であることが必須ですが、自宅をバリアフリー化した場合にもらえる公的な助成金の制度となります。
65歳以上で、要介護認定、または要支援認定を受けている場合、1人あたり原則として1回、申請により住宅改修にかかった費用の一部の支援を受けることができます。支給限度基準額の20万円の9割(※)、つまり18万円を上限として給付されるものです。
※所得により変動あり
住宅改修費支給制度の対象となる工事は、

上記の他、これらの工事を行う際に必要となる付帯工事などが当てはまります。
申請をする場合は「居宅サービス計画」を作成するケアマネージャー等に相談し、「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらう必要があります。この書面を作成できるのは、ケアマネージャー(介護支援専門員)、地域包括支援センター担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上等、一定の資格を有する人に限られています。
そして、施工業者に「工事費の見積書」と「完成予定の状態が分かる資料(写真や間取り図等)」を用意してもらいます。必要書類が揃ったら、必ず工事前に地域の介護保険課へ提出し、着工許可がおりてから工事を開始しましょう。工事が完了したら完了報告書類を提出することも必要です。
『介護保険における住宅改修』/厚生労働省
●リフォーム融資『高齢者向け返済特例』
「高齢者向け返済特例制度」とは、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が行う直接融資業務の1つで、「死亡時一括償還型リフォーム融資制度」のことです。
満60歳以上の方が自宅をバリアフリー工事、または耐震改修工事を含むリフォームをする場合、1,500万円を限度に融資し、申込人(連帯債務者含む)が亡くなった時点で、相続人が担保提供された土地・建物を処分するなどして一括返済するというものです。
この特例制度を利用すると、亡くなるまでの毎月返済額は「利息のみ」となるため、支払いを低く抑えられるのが特徴です。
リフォーム融資【高齢者向け返済特例】/住宅金融支援機構
他にも、住宅金融支援機構が行う高齢者が使える制度としては、下記もありますので参考にして下さい。
一定の基準を満たす省エネリフォーム工事(「断熱性を高める工事」または「省エネ設備を導入する工事」)を行うためのリフォーム資金の融資。
グリーンリフォームローン【高齢者向け返済特例】/住宅金融支援機構
借入申込時の年齢が満79歳未満の方で、耐震改修工事または耐震補強工事を行うために必要な資金の融資。
リフォーム融資(耐震改修工事)/住宅金融支援機構
中古住宅の購入とあわせて、一定の要件を満たすリフォームを実施することで借入金利を一定期間引き下げる制度。
【フラット35】リノベ/住宅金融支援機構
住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する、満60歳以上の方向け住宅ローン。
【リ・バース60】/住宅金融支援機構
まとめ

多くの金融機関では、70歳を超えるとリフォームローンを利用できない可能性が上がります。ローンを組めないと資金を調達できず、リフォームをあきらめざるを得ない状況も考えられます。
しかし、高齢化が進む昨今において、“高齢者に必要なリフォーム”はとても大きなマーケットであるといえます。金融機関をはじめ、国や自治体からも様々な支援があり、これから新しく出てくる商品やサービスもあることでしょう。
今後、リフォームを考える際には、「高齢者向け返済特例制度」や様々な住宅助成制度を活用したリフォームプランを検討してみてはいかがでしょうか。
そして、老後のライフプランも含め、“住まいの相談”ができる「専門家」を見つけることができれば、「リフォームに多額の資金を遣ったことで生活がキツくなってしまった…」など、失敗や今後の不安を抱えることなく、理想の住まいを整えることができるのではないでしょうか。
- 執筆・監修
須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役)
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。