高齢者の不動産活用法『リバースモーゲージ』

高齢者が利用できる融資制度の一つに「リバースモーゲージ」があります。自宅(不動産)を担保に融資を受け、そのまま自宅に住み続けることができる制度になります。
リバースモーゲージ以外に高齢者でも利用できる「リフォームローン」や、年金受給者でも利用しやすい「高齢者向け返済特例」については下記の記事をご覧ください。
リバースモーゲージでの融資の目的は、主に“リタイア後の生活費”と考えられています。高齢者にとって、インフラ費用の高騰や、物価高もいつまで続くか分からない現在…、年金だけでの生活では心許ない場合もあるでしょう。
今回は、高齢者が所有不動産を活用することで資金を確保できる制度の一つである「リバースモーゲージ」についてメリット・デメリットを含め解説します。
高齢者が利用できる『リバースモーゲージ』とは?
リバースモーゲージとは、自宅を担保にすることで生活費などを借り入れることができる住宅ローンの一種で、自宅に住み続けながら融資をうけることができます。
通常のローンは毎月返済していくケースが多いですが、リバースモーゲージでは毎月利息分のみを支払い、契約者が亡くなった時に元金を返済するものが一般的です。いわゆる、融資期間の経過に合わせて融資残高が増えていく点が特徴です。
自宅を担保に住み続けながら融資を受けられる「リバースモーゲージ」という同じような商品にも関わらず、金融機関と、社会福祉協議会が取り扱う公的なサービスである「不動産担保型生活資金」には大きな違いがありますので注意が必要です。
金融機関の『リバースモーゲージ』

金融機関が取り扱うリバースモーゲージは、毎月利息分のみを支払い、元金は契約者が亡くなった後、相続人が自宅を売却することなどにより一括で返済します。
商品の仕組みや条件等は金融機関によって異なり、定期的に融資を受けられる「年金型」や、一括で借り入れする「一括融資」があります。使用用途も、老後の生活資金の他、建物のリフォーム費や医療費、住宅ローン残債の支払いなど様々な用途があり、金融機関によって条件がありますので確認が必要です。
そして、金融機関独自の商品と、住宅金融支援機構と金融機関が提携した商品「リ・バース60」があります。
『リ・バース60』とは?
「リ・バース60」は、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供するローン商品となります。
金融機関独自の商品は、生活資金の他に、住宅の建て替え、趣味やレジャー費用など、老後生活を豊かにすることが目的であることが多いため、資金の使い方は比較的緩やかです。例えば老人ホームなどへの入居一時金として利用することも可能です(取り扱う機関によっては使用用途が限定される場合もあります)。
しかし、「リ・バース60」は、住宅の建設、購入、リフォームなどに加え、住宅ローンの借り換え、高齢者向け住宅への入居一時金の使用用途が条件となり、生活資金や趣味・レジャー費用等としては利用できませんので注意が必要です。
また、国土交通省からは「リ・バース60」を活用した耐震改修融資について、金融機関へ利子補給を行い、利用者に対して無利子又は低利子で提供できる制度を行っており、高齢者世帯が住む建物の耐震改修を後押ししています。
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【リ・バース60】耐震改修利子補給制度/住宅金融支援機構
金融機関独自の商品と、「リ・バース60」では、利用可能年齢、資金の使用用途、融資の限度額などの商品内容は金融機関ごとに異なりますので、「リ・バース60」を取り扱う金融機関に確認が必要です。
社会福祉協議会の『不動産担保型生活資金』
社会福祉協議会が取り扱っている「不動産担保型生活資金」は、高齢者世帯を対象とし、その土地や建物を担保に“生活資金”を融資する制度で、現金収入が少ない高齢者に、土地や建物を活用して自立支援を図ってもらうことを目的とした公的な制度です。
受付窓口は、住んでいる市町村の社会福祉協議会が担います。「社協」とも呼ばれる社会福祉協議会は、地域住民が安心して生活できるようにするための「福祉のまちづくり」の実現に向けて活動している民間団体です。福祉サービスの向上や民生委員の支援など、福祉関連で幅広い活動をしています。
不動産担保型生活資金も金融機関のリバースモーゲージと同じく、契約者は自宅に住み続けながら毎月利息のみを支払い、自身が亡くなった時等に相続人及び連帯保証人が自宅を売却するなどして借入元金・利息の返済をすることになります。
不動産担保型生活資金は様々な条件があります。
“高齢者の自立支援”を目的としているので、利用者は65歳以上と決まりがあり、親以外の同居人がいないことも利用条件となっており、子どもが同居している場合はこの制度を利用することができません。さらに、市町村税の非課税世帯または、均等割課税世帯程度という世帯所得も条件の一つとなっています。
また、担保となるのは住宅用の土地付き一戸建てのみとなり、建物だけの所有や分譲マンションではこちらの制度を利用することはできません。さらに、不動産に貸借権や抵当権等が設定されていないことも条件となります。
貸付限度額は、担保となる土地評価の約70%までとなり、毎月の貸付金は30万円以内となります。また、限度額に達した場合は、生活費となっていた貸付金は止まり、金利だけの支払いが続きますが、自宅に住み続けることはできます。
不動産担保型生活資金を利用する場合、様々な事前審査等を行うため申し込みから貸付金交付まで約6ヶ月かかります。さらに、申し込みや契約にかかる経費(不動産評価料、不動産登記費用、事前審査に必要な証明書等発行手数料等)は契約者の負担となりますので、貸付金交付までにかかる費用を確認しておいた方がいいでしょう。
そして、貸付契約の終了は下記のいずれかの事由が生じた場合となります。
●契約者が亡くなった時
●社会福祉協議会 会長が貸付契約を解約した時
●契約者が貸付契約を解約した時
貸付契約終了後、返済までの措置期間は3ヶ月となり、契約者が亡くなって契約終了となった場合は、相続人及び連帯保証人に一括での返済が求められます。返済期限が過ぎても返済ができない場合は、延滞利子(年3%)が発生しますので注意が必要です。
『リバースモーゲージ』のメリット・デメリット
金融機関の「リバースモーゲージ」、社会福祉協議会の貸付資金制度「不動産担保型生活資金」、どちらも毎月の支払額を抑えることができるため、老後の生活での限られた資金を有効に活用することができます。豊かに過ごすために活用できる制度ではありますが、もちろんデメリットもあります。
考えられるメリット・デメリットの中から、いくつかピックアップしてご紹介します。


まとめ
戸建ての自宅を所有しているが相続人がいない方や、老後の資金に不安がある方は、リバースモーゲージの利用を検討することも老後を豊かに過ごすための一つの方法かもしれません。

また、リバースモーゲージは自宅に住み続けながら老後資金を受け取れるという点で、「リースバック」とも比較されるサービスです。リバースモーゲージはローン商品であることに対して、リースバックは不動産取引であるため、根本的に異なるサービスです。
リースバックについては、下記のコラムを参考にしてください。
参考記事:住宅における『リースバック』のメリット・デメリット
金融機関や社会福祉協議会、どちらのサービスにもメリット・デメリットがあり、利用条件や返済方法など、様々な面で違いがあります。ご家族や現在の収入、今後の収入などを整理した上で、ご自身に合ったサービスを検討・利用することが重要です。
- 執筆・監修
須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役)
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。