介護・福祉

高齢者向けリフォームは『バリアフリー』だけじゃない! ~駐車スペースの重要性~

高齢者向けリフォームといえば、「バリアフリー」が真っ先に思いつくのではないでしょうか。もちろん、生活する上で安全面を考えるとバリアフリー化していくことは、とても重要であるのは間違いありません。

参考記事:『バリアフリーリフォーム』で高齢者にも安心・安全な住まいを

しかし、高齢者や高齢者が多く住む地域にとって、バリアフリー化と同じくらい重要であり、今現状も必要とされている事があります。

今回は、実際に介護の現場で働く方々や、介護サービスを利用する高齢者から伺った話をお伝えしたいと思います。

広い庭のある住宅

住宅街には、手入れされた“庭”のある住宅がたくさんあります。元気なうちは自分たちで庭の手入れも積極的に行い、きれいな花を咲かせる草木が季節を感じさせてくれていたことでしょう。

しかし高齢になるにつれ、手入れの負担や作業の危険度は増していきます。高所での作業や、真夏、真冬の作業は高齢者にとって体力的にも辛いことでしょう。もちろん、費用をかけて造園業者やエクステリア業者に依頼し維持していくこともできます。しかし、手入れが行き届かず放置されてしまっている庭も見受けられます。

その庭が、高齢者にとって有効的に使えるスペースとして注目されています。特に入り組んだ狭い住宅街にある住宅であれば、なおさら必要なスペースに生まれ変われる可能性があるのです。

入り組んだ狭い住宅街

狭い住宅街を介護事業者の車が走っている…、皆さんも見かけたことはないでしょうか。訪問介護、もしくはデイサービスのお迎えかもしれません。しかし、前面道路が狭い住宅や、駐車スペースを確保することができない住宅の場合も多く、現場の方々は駐車スペースに苦労しているそうです。

高齢者ですから、素早い乗り降りは難しく、まして車椅子の場合はさらに時間を要します。少し離れたところに車を停め、お迎えに行かなければいけないケースや、近所の駐車スペースをお借りすることもあるそうです。

現場の方々は、利用者さんにできるだけ負担をかけることなく「ドア・トゥ・ドア」で送迎することを前提としているそうですが、現実的には「道が狭い」「駐車場が無い」「ブロック塀や樹木などで覆われ、停車スペースが無い」等が理由で、「ドア・トゥ・ドア」が不可能な住宅も多く、長年の悩みの種という話も耳にします。

自宅の使われていないスペース

訪問介護等、介護サービスを利用されている方で、自宅の使われていないスペースや、広い庭先を駐車スペースへリフォームするという考え方があります。これも、建物内のバリアフリー化と同じく“介護しやすい環境へのリフォーム”の一つであると私は思っています。

そして、現場で働く方々や、介護サービスを利用する方々の声を聞く限り、今後さらに増していく高齢者、介護サービスを受ける方が増えていく中で、近隣や地域に迷惑をかけない対策として必要なリフォームではないでしょうか。

さらに、狭い道が多く入り組んだ住宅街の中に自宅がある場合は、老朽化し放置されたブロック塀や樹木が崩壊してしまったら、緊急車両が通れない可能性があります。

国土交通省でも、「令和12年までに耐震性が不十分な住宅、令和7年までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物をおおむね解消する」ことを目標として掲げ、所有者による耐震化を支援しています。この支援には、ブロック塀等撤去工事等にかかる費用の一部を助成する支援を行っている自治体もあります。

参考記事:空き家の耐震性を考える ~補助金・助成金の活用~

こういった自宅で暮らしている場合には、介護車両や介護のために訪れる子どもたち、災害時等、様々な局面で駐車スペースが必要だと考えます。

実際にブロック塀を取り壊し、庭先に駐車スペースを造った外構リフォーム工事の事例をご紹介します。

工事前

工事風景

完成した駐車スペース

玄関前には広々とした駐車スペースが完成。車で来られる家族や来訪者、今後、介護サービス等を利用することになっても「ドア・トゥ・ドア」で送迎してもらうこともできます。

さらに、以前はブロック塀や植栽等で死角が多かったのですが、オープンになったことで見渡しがよく、日差しも入り明るくなりました。防犯面にも繋がる「外構リフォーム工事」といえるでしょう。

まとめ

バリアフリー以外の高齢者向けリフォームとして、今回は“駐車スペースを設けるリフォーム”をご紹介しました。実際に現場で働く介護に携わる方々や利用者さんたちからも、“送迎”という視点でみると、日々苦労されているお話を聞きました。

入り組んだ狭い道が多い住宅街では、特に有効な手段だと思います。訪問介護等の介護サービスを受けやすくなることはもちろん、防犯や、災害時のトラブルを減らすことにも繋がります。

高齢化に伴いご自宅のリフォームを考えている方は、玄関周りや庭先なども含め、バリアフリー化のリフォームを検討してみて下さい。様々な視点から今後の生活をイメージすることが、先々も安心して暮らせる住まいになるのではないでしょうか。

弊社では、2025年問題「超高齢化社会」へ向け、立川市を拠点とし国分寺市、国立市を中心に地域密着型「高齢者宅の防犯・防災」の強化を提案しています。ご興味のある方はお気軽にお問い合せ下さい。

須崎 健史
執筆・監修 須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役) 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。