『バリアフリーリフォーム』で高齢者にも安心・安全な住まいを
今までは家族にとってちょうどよい広さの家でも、子どもが独立し夫婦二人暮らしになると広すぎると感じることもあるでしょう。年齢を重ねて老後のことを考えるようになると、広い家にこのまま住み続けるべきなのか悩む方も多いようです。さらに、ご家族の「同居した方がいいのかだろうか」というお悩みも尽きないものです。
親が高齢になって身の回りのことをどこまで自力でこなせるか、足腰が弱ったときに今の自宅で安全に生活することができるのか、現在の子どもの立場から親の老後生活を想像するのは難しいでしょう。弊社にも、高齢者ご本人やご家族から老後の住まいに関するご相談を受けることが増えています。
今回は、今後も自宅(持家・戸建て)を維持し、老後生活が安全に過ごせるようにするためにはどのような改修が必要なのかを考えてみたいと思います。
バリアフリー住宅で高齢者も安全に暮らす
長年生活してきた自宅。今までも維持するために大幅なリフォームはなくとも、経年劣化もあり細かなメンテナンスはされてきたことでしょう。しかし、老後を安全に過ごす住まいでは、バリアフリー化のリフォームが最優先事項と考えられるのではないでしょうか。
バリアフリー住宅とは、「高齢者の介護のため」「体に障害がある人のため」というイメージがあるかと思いますが、リフォームした住宅を子どもが相続し住み続ける可能性や、将来介護が必要となったとき、家族やヘルパーの方々が介護しやすい住宅にするという意味でも大切なリフォームだと思います。
そして高齢者や体の不自由な方だけではなく、小さな子どもや妊婦さんなど、すべての人が安心・安全・快適に暮らせるようにバリア(障壁)を取り除き、安心して暮らせる家がバリアフリー住宅なのです。
バリアフリー化のリフォームで主な実施箇所としては、トイレ・浴室・廊下などが多く、その内容としては「手すりの設置」や「段差の解消」などがあります。
玄関などの段差が大きい場所や階段、トイレ・浴室など狭いスペースで立ち上がったり座ったりと体勢を変えないといけない場所では、手すりを設置して身体を支える事ができるようにします。
また、段差の解消は、躓きによる転倒防止や、車いすでの移動を容易にできるようにします。室内の小さな段差はもちろん、玄関から道路までの通路等の段差を解消することも大切です。
介護保険を利用した住宅改修
バリアフリー化のリフォームでお話した、優先して設置したい「手すり」。この手すり設置はいくつか条件はあるものの、介護保険が利用できることはご存じですか?
介護保険には、居宅介護住宅改修費および介護予防住宅改修費を支給する制度があります。これは、要支援・要介護の認定を受けている方が暮らす住宅でバリアフリー工事をする際に、改修費用の一部が支給される制度で、自己負担額を1~3割程度(最大20万円まで。負担割合は所得によって変わる)にすることができるのです。
改修の内容は「手すりの設置」や「床の段差解消」など決まりはあるものの、介護が必要になった人の生活課題を解決するための改修が対象となっています。
介護保険というと、介護サービスを利用する際に使う保険というイメージがあると思いますが、条件さえクリアすれば住宅改修にも利用できるので、費用負担を抑えるためにも活用することをおススメします。
自宅も維持し『心身の健康』も維持する
住宅をリフォームするにあたり高齢者にとっての大切な事は、できるだけ自分の足で家の中を安全に移動することでき、自分だけでトイレや入浴など身の回りの事がしやすいように住まいの環境を整え、「心身の健康」を維持する事ではないでしょうか。
そして、他人から見ると動きづらい動線や間取りだったとしても、ご本人にとっては住み慣れた環境のはず。大きく変えることによって、生活リズムが崩れてしまうこともあります。
特に高齢者は、新しい動線や環境にとまどいや不安を感じられる方が多いといいます。大がかりなリフォームもいいですが、今までの生活が長く続けられるようなリフォームを考えることも大切です。
そして、リフォームのタイミングに悩まれる方も多いようです。必要になってから実施すれば良いと思いがちですが、老後の時間が長くなる「人生100年時代」の今、早めに備えることはますます重要性を増しています。
早いうちから自宅の住宅事情を見据え、住まいの備えに取り組んでいくことが、安心な老後を送るために重要といえます。バリアフリー化することで現在の家庭内事故も未然に防ぐことができるので、今と今後の暮らしをイメージし、元気なうちに備えておくことが大切です。
- 執筆・監修
須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役)
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。