空き家

自宅が空き家に! 『賃貸』という選択肢

高齢者が老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに転居し、自宅が「空き家」になってしまうケースがあります。高齢者だけではなく、想定外な転勤や突然の相続などで同じ状況になる方もいらっしゃるでしょう。

そんなとき「自宅を貸したい」という考え方もあるのではないでしょうか。貸すことにより家賃収入を得られれば、家計にもプラスになりますし、将来子どもに残せる資産にもなります。また、数年後にご自身が住むこともできますね。しかし、実際に貸すことができるのか、できるならどうすればいいのか、分からないことも多いと思います。大切な資産ですからトラブルは避けたいものです。


今回は、自宅を貸すときの流れ、注意点について解説します。

自宅を貸すための一般的な流れ

1.不動産会社探し

自宅を貸したいと考えた場合、まず行うことは入居付けや入居後の管理委託を担ってくれる不動産会社探しです。どこの不動産会社でもいいというわけではなく、会社によって得意・不得意があります。その中で賃貸の仲介や管理を得意とする会社を探し、いくつかの会社をピックアップして比較しながら検討していきましょう。

そして、自宅に近い不動産会社が理想です。地域の不動産事情や特性を理解しており、何かあった際にすぐに駆け付けてもらえます。ホームページなどで探すこともできますが、実際に訪問し、会社の雰囲気や担当者と話すことも大切です。信頼でき安心して任せられる会社を選ぶようにしましょう。

2.募集条件を決める

不動産会社が決まったら、契約形態や賃料、借り手の条件(個人や法人、外国人等)や保証人、保証会社を使うのか、ペットの飼育は可能にするのかなど募集条件を決めていきます。初めて貸し出すという場合は決めることがたくさんありますが、不動産会社と相談しながら決めていけば大丈夫です。

その中でも「賃料」を決める事は重要です。築年数や家の広さ、修繕の有無、設備、周辺エリアの状況などを不動産会社に伝え、家の中も実際に見てもらい賃料査定してもらいましょう。プロの意見を参考にしながら、自分の希望も伝えます。希望は事前にまとめておくといいですね。特に、税金や管理費などの経費を把握した上で、収支計画を立てておきます。そうすることでどのくらいの賃料で貸せばいいのか、その賃料は相場に合っているのかなどスムーズに話が進むでしょう。

3.リフォームの検討

そして、募集条件を決めるのと並行して、リフォームの検討も必要です。家を貸す前にリフォームするべきかどうかは重要な問題です。リフォームした方が入居者が決まりやすいのは事実ですが、費用をかけすぎても収支が合わなくなります。家賃設定や、貸し出す期間も考慮する必要があるので、不動産会社に相談しながら決めていきましょう。

リフォーム会社は自分で探してみると、相場観など知識を得ることができますが、まずは相談している不動産会社に聞いてみましょう。リフォーム会社も含めて様々な業者との付き合いがあるはずです。

そして、自身で探したリフォーム会社と不動産会社から紹介されたリフォーム会社の提案内容や見積り額を比較して、依頼する会社を決めます。入居前に行うハウスクリーニングも同様です。不動産会社に協力してもらいながら様々な経験することで、自身の知識も増え、今後の賃貸経営に生かせることでしょう。

4.募集開始

細かい条件やリフォーム内容が決まったら、リフォームと並行して不動産会社で募集を開始してもらいます。

リフォーム途中だと、内見をしてもらえても「完成イメージ」が湧かずに決めてもらえないといったケースも想定できます。しかし、不動産会社から連絡や報告がない場合はこちらから連絡を取り状況を確認しましょう。反響数や内見数などを確認し、積極的にお客様に紹介してくれているかなど探ります。

決まらない理由が建物にあり、改善できる場合は検討することも必要かもしれません。しかし、残念ながら動きの悪い不動産会社がいることも事実です。積極的に動いている様子が感じられない場合は、入居者が決まるまで長期化する恐れがあります。リフォームに費用をかけているなら、できるだけ早く入居者を決めたいところですね。待っているだけでは状況が変わらない可能性も考え、募集の仕方を考え直すなどテコ入れが必要かもしれません。たとえリフォーム途中だったとしても、エリアや広さ、担当営業マンの丁寧なリフォーム内容の説明など、提案力で決めてもらえることもできるはずです。

募集中は、そういった提案力や行動力のある不動産会社に任せられているか見極めることも必要です。

そして、入居したいという方が現れ、保証会社の審査や条件等問題がなければ契約書類を交わします。契約は宅建業者である不動産会社に任せましょう。賃借人が決まり、リフォームが無事に終われば晴れて貸し出しが開始します。

自主管理と管理委託

自宅を貸し出したら、家賃の入金管理、修繕等の依頼に対する対応、契約更新や退去に関する様々な「管理業務」が発生します。貸主自身で行うことも可能ですが、クレームやトラブル等、いつ起こるか分からないことにも常に対応できるようにしておかなければなりません。家賃交渉やクレーム対応、家賃の督促、退去の立ち合い等、全て入居者と直接やり取りすることになるので、時間や労力を使う上に、ときには頭を悩ませるようなことも出てくるでしょう。

そのため、多くの貸主は不動産会社に管理を委託しています。管理業務の内容はとても幅広く、大変な業務です。そのため、管理費用はかかりますが、その分知識や経験のあるプロに依頼することが多いようです。

管理委託をする場合は、前もってお互いの業務内容を確認し、役割分担をはっきりさせておきましょう。全て丸投げ状態にしてしまうと、管理会社だけの判断で設備交換や修繕を行い、高額な請求書だけが届いたなんてことにもなりかねません。不動産会社との信頼関係はもちろん、お互いに「報連相(ほうれんそう)」を徹底することが必要です。

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンは、自分が住む家を買う人のための制度です。

貸すということになった時点で不動産投資などの事業を目的としたものになりますので、事業用ローンに切り替える必要があります。ですが、事業用ローンは住宅ローンよりも金利が高くなってしまうことが難点です。転勤や介護など、やむを得ない事情などによって一定期間だけ貸したいという場合は、住宅ローン継続中での賃貸を認めてくれるケースもあるので、不動産会社やローンを組んでいる金融機関に確認することが重要。仮に、住宅ローンを借りている金融機関に無断で自宅を貸し出し、それが発覚した場合、住宅ローンの一括返済を求められる恐れもありますので、必ず相談しましょう。

まとめ

「家を貸す」ということは、様々なメリット、デメリットがあります。築年数や自宅のある地域、自宅を貸す理由によっても変わってくるでしょう。それぞれのメリット、デメリットを把握し、信頼・相談できるプロ(不動産会社や専門家等)を見つける事が重要です。そのためにも複数の不動産会社のサービス内容をじっくりと比較したり、賃貸経営について勉強してみてください。今この記事を読んでくださっている方は、その一歩を踏み出していますね。

自宅は大切な資産のひとつですので、ご自身やご家族にとって最善の選択肢をみつけていきましょう。

須崎 健史
執筆・監修 須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役) 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。