住み替え

『持ち家vs賃貸』高齢者に最適な住まいとは?

不動産における永遠のテーマといわれる『持ち家vs賃貸』。

「若いうちにマイホームを建てて、一生住み続ける」という考え方は一昔前の話。近年では、「身軽な賃貸住宅に住み続ける」という方も増えてきました。

そして、子どもが独立し、定年退職を迎え、高齢者といわれる年代に突入する頃、持ち家の方は「自宅の相続はどうしよう」、賃貸住まいの方は「このまま賃貸で家賃を払い続けられるのだろうか」など、老後の住まいについて考えるようになるのではないでしょうか。

弊社にもそのようなご相談が増えています。

今回は、持ち家・賃貸に住むメリットとデメリットから、老後にはどのような住まいが相応しいのか解説していきます。

「持ち家と賃貸」それぞれのメリット

老後を見据えたとき、持ち家と賃貸ではどのような違いがあるのでしょうか。まずはそれぞれのメリットから解説していきます。

【持ち家のメリット】

持ち家は、定年後に収入が減ったとしてもそれほど負担になることもなく住み続けることができ、慣れ親しんだ環境で老後を送ることができます。

そして、住宅ローンを完済すれば資産となるため、将来的にコンパクトな住まいに買い替えたり、高齢者施設に入ることになったとしても、売却することで費用の元手にすることもできます。そして、高齢化に向け自宅をリフォームすることになっても、融資の担保にすることもできます。

さらに、パートナーや子ども達に財産として残すこともできるでしょう。

【賃貸のメリット】

賃貸住まいの場合、「不動産を資産として持たない」ということが大きなメリットだと考えられます。不動産は現金や預貯金、株式などと異なり簡単に分割できないので、将来相続が発生したときにトラブルの種になる可能性があります。

また、設備の故障や老朽化、災害で被災したときも建物の修繕にかかる費用は貸主(大家)負担ですし、持ち家でかかる固定資産税や都市計画税の支払いも不要です。

「持ち家と賃貸」それぞれのデメリット

【持ち家のデメリット】

家は所有すると、その場所から簡単に移動できなくなるということが、場合によってはデメリットになります。近隣住民とトラブルがあったとしても、上手く折り合いをつけて生活していかなければなりません。

特にマンションでは、上下左右との距離が近いことから騒音問題やバルコニーでの喫煙、また敷地内にある駐車場トラブルなど、このようなケースは分譲でも珍しい話ではありません。

さらに、経年劣化による家の補修や設備交換等が必要になり、その都度費用が掛かることや、固定資産税・都市計画税の支払いは所有している限り続きます。

また賃貸のメリットで前述した通り、不動産は分割が難しいため、将来相続でトラブルになる可能性もあります。

所有しているのがマンションの場合、古くなるにつれ管理費や修繕積立金が年々上がるケースがあります。また、物件によっては古くなり、空室が目立つようになり、最悪の場合、建物自体がスラム化してしまうことも考えられます。

【賃貸のデメリット】

若いうちであれば、身軽に引っ越すことができるというところが賃貸のメリットではありますが、高齢になるとその点はデメリットとなります。認知症や孤独死など、高齢者特有のトラブルを想定し、高齢者へ貸し出すことに消極的な不動産会社(管理会社)や貸主(大家)が増えています。

社会問題と言われている「高齢者への貸し渋り」。高齢になってから賃貸住宅に入居するということはとても難しいのです。

そのような状況の中、賃貸住宅に長年住み続けていても、不動産会社や貸主(大家)の都合で賃貸借契約が継続されず、住み続けることが難しくなるケースもあります。

多くの場合は、建物の老朽化で取り壊す、又は建て替えのため立ち退きを要求されること。もちろん貸主(大家)都合なので、立ち退き料を支払ってもらい別の賃貸物件を探すことになりますが、高齢の場合、それが簡単なことではないということは前述した通りです。

そして、賃貸住宅に住み続けられたとしても家賃の支払いが一生続きますので、持ち家より住居費の負担は大きいかもしれません。

老後の住まいは人それぞれ

高齢者といわれる年代になったとき、持ち家と賃貸のどちらが適しているかは、個人の価値観やライフスタイルによっても異なります。経済状況や、家族・親族との関係性なども影響してくるでしょう。

例えば、高齢者が賃貸住宅を借りようとする場合、子どもがいない、あるいは疎遠になっているとの理由から、不動産会社に緊急連絡先を提示できない場合には苦労を強いられる可能性は高いです。

近年、部屋を借りる場合には保証会社を付けることがほとんどですが、高齢者に関しては、いざというときに身元を引き受けてくれる人がいるかどうかを重視する貸主(大家)や不動産会社が多いためです。

一方、持ち家を所有している場合は、高齢化に向けたリフォームが必要かもしれません。年齢を重ねていけば、誰でも判断能力や身体能力が低下してしまいます。安心して住み続けるには、どのようなリフォームが必要か考えていくことも重要です。

関連記事:『バリアフリーリフォーム』で高齢者にも安心・安全な住まいを

老後の住まいは、必要な条件やこだわるポイントなど若い頃とは大きく変わります。そして、持ち家や賃貸以外にもさまざまな選択肢があり、老人ホームなどの高齢者向け施設、シニア向けの分譲マンションや賃貸住宅に入居することもひとつの方法です。

まとめ

持ち家と賃貸にはそれぞれメリット・デメリットがあり、老後の住まいに適しているのはどちらが良いという明確な答えはありません。しかし、どのような生活を送るか、送りたいのかによって、適した方法をイメージすることはできます。

例えば、現役時代は賃貸で身軽に暮らし、退職後はお気に入りの地域や街で家を購入する、または土地を購入し自分たちの好きなように家を設計するなど、老後生活が楽しくなりそうなプランも良いですよね。

高齢になれば、誰でも冷静な判断や行動が難しくなります。元気なうちに、老後の住まいについて考えておくことは、将来楽しく、元気に過ごすためにとても大切なことです。

須崎 健史
執筆・監修 須崎 健史(株式会社bluebird代表取締役) 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/福祉住環境コーディネーター2級/国内旅行業務取扱管理者
2023年、空き家・空き店舗を利活用した「オフィス兼アトリエ」を立川市若葉町にオープン。住宅業界に25年以上身を置き、そこで培った幅広い知識と経験・資格を活かし、住生活アドバイザーとして空き家対策や利活用、相続対策、高齢者の住まいなど『福祉・介護×住まい』について、地域の課題解決に取り組んでいる。